浅野いにお短編集「世界の終わりと夜明け前」感想 みんな少しだけ前を向いて生きている

世界の終わりと夜明け前感想

新作漫画ではないのですが、知り合いの方からオススメしてもらって読んだ漫画「世界の終わりと夜明け前」の感想をつらつらと書いていこうかと思います。

絶妙に鬱々しくて痛々しい短編漫画の詰め合わせ。若いとさ「あぁ~自分このままでいいのかな~」とか「一生懸命ってなんだっけ?」みたいなことを、ふと思う時があるじゃないですか。少なくとも私は思います。

そういう漠然とした言いようのない思いを抱えている人ならなんとな~く浸れる漫画だなって印象。以下、ネタバレ含めて感想を書いていくのでご注意ください。

浅野いにお短編集「世界の終わりと夜明け前」感想 みんな少しだけ前を向いて生きている

短編ごとにざっくりあらすじ

「夜明け前」
とある一日、夜が明けるまでのたった数時間。色んな人がいろんなところで諦めたり再起しようとしたり死のうとしたり…でも結局、夜は明けて日は登るよ。世界ってそんな感じじゃない?って話

「アルファルファ」
田舎の閉塞感に嫌気がさしている女の子と斜に構えている男の子の話。

「日曜・午後・六時半。」
三部作、父親が家から出て行ってしまった家族の話。

(夏の思い出)
昔は夢があったけど今はテキトーに流されながら生活している長男。父親が家を出る前に残した言葉と元カノ(既婚)に再開したことをきっかけに、誰かのせいにしたりいっぱいいっぱいな振りをして見逃してきた自分を少しだけ奮い立たせる話。

(ア ガール イン ブリリアントワールド オブ ア ボーイズ デイドリーム)
おバカな次女と、同じ予備校に通っている男の子の話。

(帰宅)
仕事も妻も失って世界にも裏切られた男の逃避と(父親)の帰宅の話。ちなみにアルファルファで田舎村を出て行った女の子もキーパーソンになる。

「超妄想A子の日常と憂鬱」
タイトルの通り超妄想しながら、その度に現実を突き付けられながらそれでもちゃんと(?)生きていくパワーを持った女の子の話。

「休日の過ごし方」
いつもとは少しだけ違う休日、選択のタイミングが少しずれただけの普通の女の子の休日の話。たまにはこういう休日でもいいんじゃない?

「17」
ひょんなことからコンビニのレジのお金を盗んでしまった男の子の話。やっちまったものはしょうがない、どうせ捕まるならと同級生の女の子をお金で買おうとしたり…でもそんなときに限って世界はそのまま回り続けたりする。

「素晴らしい世界」
過去に自分が書いた自分宛ての手紙を未来の自分が読む話。

「東京」
漫画家の話。あの時こうしていたらとか考えるけどやっぱり今の自分は自分でしかないと気付くための話。

「世界の終わり」
アルファルファ、夏の思い出に出てきた女の子の話。

 

こんな感じですかね。ざっくり過ぎて全く伝わらなさそうだけれど。

超個人的感想

まぁ今回はあらすじよりも感想がメインってことで!

冒頭でも言ったけれど、絶妙に鬱々しくて痛々しくて、それでいてちょっとだけ頑張ってみるか…って気持ちになる作品でした(ここの”…(三点リーダー)”には、『とは言いつつも重い腰は上がらない程度』という含みがある)。

鬱々しいっていうのは悪い意味じゃなく、みんなが抱えているけど表に出していない「どうにもならない感」つまり自分や他人、社会に対する諦念感という形で現れる薄暗い感情のことを指していて、それが現代っぽくて…

自分にとんでもなく自信があるとか、公私ともに今が最高に楽しいし充実してる! って人じゃない限り少なからず「自分はこれでいいのかな?」って思いを抱えたまま生きてるんじゃないかなと思うわけですよ。

あるはずのない答えを求めながら生きてる、自問自答しながら生きてる。そういう人たちの日常の延長線上の話が詰まってる(あくまで延長線上であって決して日常ではないけれど)。

そしてもう一つ、痛々しいっていうのは、例えば田舎っていう閉塞的な土地に嫌気が指して早く出て行こうとしたがる女の子のことでもあるし、夜明けの”光”に希望を見出しちゃうおやじのことでもある。

斜に構えている人が多すぎて「なに斜に構えてんだ、痛々しい」って思うんだけど、一方でその人たちに共感している自分もいる。これってつまりは漫画を通して自分のこと見てるみたいだから余計に痛々しく感じるのかなと。

それでもって夜明けと共に少しだけ希望の光を見つけるじゃない? それもそれで「ご都合主義かよ! 世の中そんなに甘くない」ってツッコミたくなるんだけど、心のどっかで自分もこういう風に世界に希望を見出したいと思ってしまう。

だから「少しだけ頑張ってみるか」って気持ちが湧いてくるんだけど、でもやっぱり「いやいや待て待て、世の中そんなにうまくはいかないから頑張ったって無駄無駄」って気持ちを打ち消すことは出来ない。

こういうモヤモヤの繰り返しが詰まっているような短編集、サブカルっぽいものが好きな私としては楽しく読むことができたので満足でした。


以上、浅野いにお短編集「世界の終わりと夜明け前」感想 みんな少しだけ前を向いて生きている。

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