なぜ今ダブルヒロインが選ばれるのか?「アナと雪の女王」から見るヒーロー観の変化

ダブルヒロイン

日本では2014年に公開され、映画・主題歌ともに大ヒットを記録した「アナと雪の女王」。その主題歌「Let it Go」が人気となり大きな話題になりました。

もうひとつ話題になったのは、ディズニー作品初の”ダブルヒロイン”という設定。

今回はそんな”ダブルヒロイン”というワードに着目し、変わりつつある「ヒーロー観」と絡めて考察をしていきたいと思います。

なぜ今、ダブルヒロインが選ばれるのか

そもそもダブルヒロインとは

前提として今回は「女性主人公」という意味で「ヒロイン」というワードを使用します。

ヒロイン(Heroine)は人物・キャラクター用語の一つ。物語などの女性主人公、主人公ではないが男性主人公の恋人の女性、英雄的な女性などの事を指す。
引用:Wikipedia ヒロイン

さて、アナ雪のヒットで話題になっている「ダブルヒロイン」というワードについて。

wikiの「ヒロイン」というワードの引用から考えると「ダブルヒロイン」は、直訳して「2人の女性主人公」と捉えて問題なさそうですね。

というわけで今回は、恋愛ものなどでよく使用される”ダブルヒロイン”(男性主人公に対し相手役としてヒロインが2人いる状態)の意味とは全くの別物として考察していきます。

女の子はヒーローにはなれない?

あなたはヒーローという言葉を聞くとどんな人を頭に思い浮かべるでしょうか?

スーパーマン? 仮面ライダー? 白雪姫をキスで目覚めせた王子もヒーローといっても過言ではないでしょう。

あなたもこのようなキャラクター達を思い浮かべたのではないでしょうか。

一般的にヒーローと呼ばれるキャラクターは基本的に男性ばかり。

これは当然の結果。ヒーローというワードは基本的に”男性”を指すからです。

ヒーロー(英:hero)とは、英雄のことと、神話や物語などの男性の主人公のこと。ヒーローの多くは、普通の人を超える力・知識・技術を持ち、それらを用いて一般社会にとって有益とされる行為、いわゆる救世主としての行為を行う。
引用:Wikipedia ヒーロー

ヒーローと言えば「かっこ良くて強くて弱いものに優しい」そんな完璧超人を連想させます。代表例はスーパーマン、ウルトラマン、スパイダーマンなどなど。

近年ではちょっとへっぽこだけどやるときゃやるぜ!って感じの気弱なヒーローも登場し始めていますが、それでもやっぱりヒーローは男性。

しかしそんなヒーロー=男性!というヒーロー観の固定概念、セオリーを打ち破りそれを大々的に打ち出した作品があります

それが「アナと雪の女王」

アナと雪の女王におけるヒーロー観

ディズニー作品といえば、かわいい王女(ヒロイン)のピンチにカッコイイ王子(ヒーロー)が現れて問題解決!大円団!ハッピーエンド!

というような定番のストーリーが多いですよね。

しかしアナと雪の女王は、いままでのディズニー作品とは大きく異なります。
ヒーローが男性ではないのです。

ではヒーローがいないのか? というと、そうではなくアナとエルサがそれぞれヒーローだと言えるのです。

『アナとエルサがそれぞれヒーロー』

一体どういう事なのか順を追って説明します。

アナ雪の物語の主役はエルサ王女、アナ王女という二人の姉妹。

姉のエルサは体から雪や氷を生み出す特別な能力を持った「雪の女王」

妹のアナは、通常の王女のイメージとは少し違う「元気いっぱいおてんば王女」

上記の設定が二人をヒーローたらしめていることにお気づきでしょうか?

まずは他人と明らかに違う力を持っているエルサ。

エルサの雪や氷を生み出す力、いわゆる特殊能力は、先ほど記した”ヒーロー”の引用内の「普通の人を超える力を持っている」という部分に当てはまります

これによりエルサはある意味でヒーローとしての素質を備えているキャラクターと捉えることができます。

次に普通の、年相応の少女に見えるアナ。彼女のどこがヒーローなのでしょうか?

それは彼女の立場に秘密があります。彼女の立場、それは「一国の王女」

一昔前であれば、一国の王女というものは人前では物静かでしおらしくより女性的であることを求められたはずです。

しかし、アナはその枠には収まらない、おてんば娘タイプ。

つまり世間一般の王女像とアナを比較すると彼女は「普通の女王」とは言い切れないのです。

そして心を閉ざしてしまった姉と国の危機を救うため一心不乱に駆け出す彼女の姿はヒーローそのものだったのではないでしょうか?

アナとエルサが十分にヒーローの資質を持ったキャラクターだということが分かったところで、劇中の男性陣に注目してみたいと思います。

アナのお相手男性はクリストフ。

アナ達をサポートをするシーンはいくつか見られましたが、結局クリストフが大活躍する事はありませんでした。

物語はアナとエルサ二人の力により、ハッピーエンドを迎えます。「アナと雪の女王」は最後まで姉妹愛を軸に描かれていました。

『My sister, my hero』

つまりアナとエルサはお互いが守られる立場のヒロインであるとも言え、反対に大切なもの(国やエルサ)を救ったヒーローであるとも言えるのです。

セーラームーンからプリキュアそしてアナ雪へ

一昔前までのヒーロー物は、か弱い女性や子供を守ってなんぼ!というイメージがありましたが、その概念が変わりつつあると思います。

それは女の子が悪と戦う代表作品の変遷と似ている気がします。

まず20年ほど前から現在に至るまで人気を博しているセーラームーン。女の子が地球を狙う敵と戦う、俗にいうヒーロー戦隊物の作品でした。

数名の女の子チームになって、時には打撃系攻撃を駆使して悪と戦う。

これだけでこれまでのヒーロー観を打ち砕く作品ではあるのですが、セーラームーンにはタキシード仮面というヒーローがいました。

ということは結局「地球を守る女の子とそんな女の子を守る男性」という構図も含まれているのです。

それに対してプリキュアは劇中に男の子が登場したとしても、あくまで悪と戦うのは女の子だけ!ヒーローは女の子に限られているのです。

プリキュアも敵を殴ったり蹴ったり魔法でちちんぷいぷいなんてことはほとんどなくかなりの武闘派。

このようにセーラームーンとプリキュアでさえヒーロー観に違いが見て取れます。

数十年前、男の子が仮面ライダーに憧れてヒーローを目指したのと同じように、現代の女の子達はプリキュアに憧れヒーローを目指すのです。

いや〜時代は変わりましたね。

プリキュアを見て育った世代の女の子達がどんな女性に成長するのか、楽しみですよね。すっごい強気な女性が目立つ世代になったりして。

アナ雪から話がそれてしまいましたが結局プリキュアとアナ雪、根底にあるヒーロー観は同じだと思います。

つまり「女性は男性に守られている。男性に守られねばならない。」というヒーロー観の大元の部分が、昨今の男女平等的な考え方、女性の社会進出に伴う地位の向上によって少しずつ変わってきているのではないでしょうか。

女の子が助けられる守られるだけの時代、ヒロインでいなければいけない時代は終わりを告げ、かわりに女の子がヒーローを目指しても何らおかしくない時代に変わりつつあるのです。

もちろん肉体的な差、体力や能力をみればそれぞれ得意分野はあるはずですし、すべてを平等にという事は不可能です。

それでも女性が”守られる”という従来のセオリーを翻し、女性が”弱者を助ける”そして”女性が強く成長する”という新しいヒーロー観を大々的に打ち出したアナと雪の女王の功績は大きいと思います。

まとめ

今回は「ダブルヒロイン」というワードからヒーロー観の変化に着目して考察し、守られるだけだった女の子がヒーローを目指せる時代に変わりつつあるという点に行き着きました。

だから女の子をヒーローとして描く事のできる”ダブルヒロイン”という設定が今の時代に多く見られるようになっているのです。

そしてこのヒーロー観の変化は結局、生き方の多様化によるものだと思います。

女性は家事・育児を、男性は家族を養うために仕事を…。それが当たり前だった時代があります。

現代の日本ではこの関係性で成り立っている家庭が多く存在します。というかほどんどの人がこのような関係性を築いています。

しかし、固定概念としてあったそれは時代とともに徐々に変化し女性の社会進出など様々な活動により、性差を少なくしていく方向に進んでいます。育メン、主夫も同様です。

そんな世の中の変化の中とともに、人々の中で”何を大事にして生きるか”というものの定義が変わり、個々の人生というものを大事にする流れになってきているのではないでしょうか。

ありのままの自分、自分が本当にやりたい事、自分にあったやり方、それが人とは違っていたとしてもいいじゃないか!という風に。

また世界的な価値観の今後の流れとして性差をなくしてゆくというテーマがあると思います。

性差とは男性・女性だからこれはできる・できないというような性別の壁や差ですね。そのような性差をなくしていく流れの中にヒーロー観の変化があげられるのです。

そしてそれはアナ雪のテーマでもある「真実の愛」にもつながります。

ヒーロー(男性)とヒロイン(女性)という関係にしてしまうとどうしても恋愛的な要素を省くことができません。性愛的な部分が見えます。

ですが、それを姉妹間・同性間で成り立たせるとその人の人間としての部分に愛を見出せるのです。

これを安易に女性が男性を助ける話にしてしまうと「女尊男卑だ!」などと言われかねないのでこの点でも”ダブルヒロイン”設定は便利なんですよ。

ということで”ダブルヒロイン”という設定は恋愛的な関係「一人の性対象として」ではなく「一人の人間」に対する愛を描きやすいのです。それは親子愛ともまた異なる感情。性愛を超えた人間愛。

アナと雪の女王のキャッチコピーでもある「真実の愛」というのはこの「人間愛」にあるのではないかな〜と思ったり。

いつの時代もヒーローってのは弱者を守る人間愛の固まりのような人が多いですし。

ヒーロー観の変化から人間愛にまで話がぶっ飛んでしまいましたが、なかなか面白い観点からヒーロー観の変化を考察できたのではないかな〜と。

まぁこれからの時代助けてもらってばかりのお姫様キャラが少なくなっていくのかも知れませんね。(逆にこってこての守られお姫様キャラを書いたら物珍しくて人気がでる!…かも)

以上、なぜ今ダブルヒロインが選ばれるのか?「アナと雪の女王」から見るヒーロー観の変化でした!

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